2015年02月23日

私たちはなぜ学ぶのか ― 大学受験を通して ―

特進推進部兼3年1組担任の永井です。

2月23日,国公立大学の個別試験(二次試験)に向けた壮行会が開かれました。
壮行会の中で,2年生に向けて,3年生が1人ひとり受験に対する思いや決意を述べる姿は,彼らの葛藤と成長を感じさせるものでした。

2年前に3年生の担任を終えたとき,全力は尽くしたつもりではありましたが,「彼らにもっと何かしてあげられなかったのか」と思い悩む自分がいたことを覚えています。卒業生はみな,すばらしい進学実績をのこしてくれましたし,それ以上に,人間として大きく成長できたと思っています。15期生全員が私にとっての誇りです。それでも,卒業生全員が自身の希望の進路に進めたわけではありませんでしたし,もっと他の方法があったのではないかという思いは捨てることができませんでした。

私は,担任として,彼らに何をすべきか。何ができるのか。

わからなくなると,この一年は幾度となく,西田幾多郎の『善の研究』を手に取りました。この書は,高校時代の恩師が勧めてくれた一冊です。何度読んだところで答えを得ることはできませんでしたが,安易な答えを求めていたのではないのだということを思い出させてくれました。人間性の向上をあきらめず,常に不都合な「いま」と向き合うことの必要性を教えてくれるからです。

大学受験は,本当にいろいろな矛盾と直面する営みです。
成長を目指すのであれば,自らの理想と社会の現実とが常に対峙することになります。こうありたいという自分は,そうあってほしくはない,いまの自分を見つめることでこそ認識できます。努力はいまの自分を理想の自分に近づけますが,新しい課題を見出すことにも繋がります。努力の結果得た,試験の得点も合格した大学の実績も,自分の人間存在と等しい価値を持つものではありません。すべては自分を獲得しようとする,人間性の陶冶(とうや)に向かう活動なのだと思います。

担任する3年1組の生徒たちに,人生における何らの答えも渡すことはできていませんが,彼らは自らを問い,自分自身の答えを得ようとしています。大学受験を終え,高校生活を振り返ったとき,どのような感想を持つのかがとてもたのしみです。



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センター試験壮行会の様子。教員から,後輩から,受験に向けたメッセージをいただきました。学校全体で受験生を応援するのが,明秀日立の伝統です。

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国公立大学個別試験壮行会の様子。後輩たちの応援を受け,3年生が思いを伝えました。生徒たち一人ひとりの思いが,「明秀日立を作っているのだな」と考えさせられる一時でした。
posted by コース主任 at 19:00| 旧ST・Sコースブログ

2015年02月16日

思いを伝えるコミュニケーションで世界を広げよう ― 特進ST・Sコース 海外修学旅行を実施 ―

みなさん、こんにちは。特別活動担当の杉山です。
昨年12月、ST・Sコース2年生諸君がカナダ・アメリカへの修学旅行に出かけてきました。ST・Sコース単独の修学旅行としては初めてのことです。一週間の旅行中、英会話教室や現地の高校生との交流会、名門ブリティッシュコロンビア大学の見学訪問などを行ったほか、3日間にわたってサレー市でのホームステイにも挑戦し、皆でたいへん充実した時を過ごしました。
 カナダを訪ねる旅の大きな目的は、もちろん英語でのコミュニケーションを経験することにあります。実際、本場の英語に囲まれて様々な活動を行っていると、生徒諸君の英語で思いを伝えようとする姿勢がみるみる変わるのがわかります。初めこそ難しく考え込んで口を開けずにいた者が、次々と繰り広げられるプログラムをこなしながら、次第に自分なりの仕方で会話をし始めるようになります。苦労しながらも相手に思いを伝えられたときの喜びが、次の行為を促す意欲へとつながる。そういう望ましい学びのサイクルがつくられるのを見ていると、実践的学習での効果の大きさを感じさせられます。
さらに、学校交流会やホームステイでは、相手となる方が決まってはいるものの、どんな経験ができるかは各自の行動次第。コミュニケーションというものが、たんに会話を意味するものではないということを身をもって知ることになります。大人はもちろん子供に対しても個人としての意思や責任を尊ぶカナダにおいては、たとえ訪問者であっても自身の立場は自らの行動によって開かねばならなりません。どのように感じていて、どうしたいのか。自分自身が相手に伝えるべき内容を確かに持ち、例え「No」であってもそれをはっきり示す態度が歓迎されます。相互の意思表明を、人間どうしの理解の起点とする文化であるといえましょう。そこでの体験は、日本での生活が「察し」や「遠慮」の文化の上に営まれていることに気づかせます。また同時に、社会における「自己」とはいったいどのような存在か、またその「意思」はいかにあるべきか、と考えさせることにもなります。
ところで今回の旅は、多くの人々との出会いにあふれたものでもありました。サレー市のホストファミリー、現地の高校生や数々のレッスンの先生、留学中の先輩方や移住して仕事をされている邦人の皆さん、街で行き交う大勢の方々。風土も生活スタイルも異なる土地を自らの足で歩き、ほんの少しではあっても一緒に過ごして垣間見た様々な人の価値観は、日ごろ同じ学校・同じ教室という均質性の高い環境にある私たちに、とてもよい刺激を与えてくれるものです。とりわけ将来の道を真剣に模索する高校2年生にとっては、視野を押し広げよりたくさんの可能性を検討する絶好の契機になったといえましょう。
帰国後一ヶ月。2年生諸君は今、各々が進路目標達成に向けた学習を本格化させています。授業に集中する真剣な眼差し、自学に打ち込む放課後の背中。それらがいくぶんたくましく見えるのは、広い世界を思い切り味わって、それぞれがひと回り成長してきたことによるように思うのです。

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現地の活動拠点はカナダの大都市バンクーバー。自然と調和した美しい建築群の立ち並ぶ中心街、観光名所のグランビルアイランド、少し足を伸ばしてアメリカ合衆国のシアトルにも出かけます。各地での自由散策は、仲間とグループを組んで観光やショッピングを楽しみます。

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英語コミュニケーションの基礎レッスンはELSプログラムで。現地の先生が本格英語でしっかりと導いてくれます(左)。一方、カナダのセカンダリースクールとの交流では、授業体験や交流ゲーム、学校どうしが披露するパフォーマンスなどをとおして、同年代ならではの仲を築きます(右)。

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メインイベントの一つはカナダの家庭へのホームステイ。大きな期待と少しの不安で最初のご対面は皆緊張の面持ち。それでも数日にわたる交流のなかで、ともに多くを学び心を交わせ合いながら、互いに別れを惜しみ合う新たなファミリーとなってゆきます。

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日本では体験機会の少ないカーリング、基本から学んでゲームにも挑戦します。これが大いに盛り上がります。もちろんレッスンは英語です(左)。ブリティッシュコロンビア大学では、留学中の先輩方十数名から直に夢と苦労を伺います。その探究心と行動力に刺激され、自分の将来を捉え直そうとする者も(右)。
posted by コース主任 at 12:00| 旧ST・Sコースブログ

2014年12月01日

未来メイカー始動!

特進推進部・地歴公民科担当の柴田です。

今秋より、私達は2年生を中心にゼミナール活動を開始しました。私たちが対象としている学問は「ミライ学」です。本来の“未来学”はFuturologyであり、未来での物事がどう変わっていくかを調査・推論する学問分野ですが、私たちはFuture Design Studiesと題して、未来をデザインすることを目指すため、「ミライ学」と表記し、「ミライ・ゼミ」と名のる事にしました。高校の科目である歴史・現代社会を応用することを念頭に、様々な学問領域を用いて活動しています。ゼミを運営する上でのコンセプトとして、生徒には批判的な目を養ってもらいたいと考えています。その目こそ、「常識のウソ」に惑わされず、真理探究に必要な資質だと思います。

ゼミでは4回にわたって「平和」をテーマに議論してきました。
平和を議題にすることで、生徒が平和とは理想であるということを抽象論を通して理解すること、現実問題との接点を通して「理想と現実」のディレンマを打破する方法を考えることを狙いにしています。分析手法としては、平和学・政治学・国際関係論・法学の理論を用いています。

第1回は総論としてとして「平和とは何か」を、第2回では理想と対極にある戦争に対する「戦争観」を、第3回では現実問題として「日本の憲法九条と自衛隊・在日米軍」を議題にしディスカッションを行いました。

生徒の議論で印象的だったのは、「平和な世界とは何か」という問いに「寿命で死ねる世界」、「危機を意識しない世界」、「戦争がないだけでなく貧困がない世界」など、等身大の答えを提示していたことです。人間は常に争う生き物で、平和とは「特殊な空間である」という興味深い答えもありました。
また、ゼミでは「備えあれば憂いなし」という自衛のためのリアリズムの戦争観を有している者が優勢で、絶対反戦は少数派で、正戦論への賛同はありませんでした。これも緊張状態が続く、東アジア情勢が反映しているのかもしれません。

これらの議論をもとに第4回は「平和と安全」をテーマに設定しました。
「平和(暴力の不在)」と「安全(暴力の許容)」の違いを示し、いかなる形であれ「暴力を許容すること」の意味を捉え直すように示唆しました。何故ならば、平和学では平和とは「暴力の不在」を意味するからです。生徒は「平和」と「暴力」という2つの定義を意識しながら、暴力に頼らない社会(すなわち平和)の実現ために、叡智を集める必要性を感じたようでした。他国と利益を共有し、相互理解を深め手を握り合うことの大切さを見直し、軍事力に頼らない国際関係を提言するという結論に至りました。生徒は安全を意識した意見に、暴力を肯定する「文化的暴力」が内在していたことに気付いたようでした。

このようにして、生徒たちは“初心”に戻って「平和」を追求する彼らの意見から、短絡的に軍事力に頼らず(“常識”の打破)、創造的視点を身に付けました。現代の国際関係を見直した時、平和は「理想」です。理想をただ時代に合わないとあざ笑うのではなく、理想を実現実現するのであれば現実的な努力だけではなく、「理想主義」的な努力も求められるのかもしれません。だからこそ、彼らには未来メイカーの資質がひとつ、身についたのではないか、と感じました。

次回からのゼミは、人間社会から少し離れ、「地球」をテーマに、自然社会と人間の関係を捉えなおすディスカッションを行いたいと考えています。今後も多角的な視点から社会現象を紐解き、未来の創造につなげるような知的探求を生徒と共に行いたいと考えています。夢(理想)追い人だけが、夢を実現することを信じて。

You may say I'm a dreamer.
But I'm not the only one.
I hope someday you'll join us.
And the world will be as one.
“Imagine” -John Lennon-

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講義(左)とディスカッション(右)の様子です。それぞれ、未来メイカーとして等身大の意見を述べています。

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左の写真は生徒によるプレゼン、右は生徒達が作成した渾身のポスターです。
彼らが作る“未来”に私も期待しています。
posted by コース主任 at 12:00| 旧ST・Sコースブログ